2013年7月18日。
名古屋から深夜バスに揺られてやってきた高知の街は、セミの鳴き声に溢れていた。
薄曇りの空、早朝6時半の高知駅。すでに高知の街は動き出していた。
まずは、駅前のパン屋で軽く朝食をすませる。
JR高知駅は、周りに店が少ないが新しくて整備の行き届いた駅だ。ただ県庁所在地にしてはやや小さな駅だった。
これから高知―松山間山越え120km 3日プラス予備日でリヤカー旅をする。
なんでわざわざリヤカーで旅をするのか?
そんな事を良く聞かれる。
一度リヤカーで旅をしたら、その楽しさが分かるはず。
それは、「旅行」ではない「旅」という言葉がしっくりくる時間。決められた行程なんてない。
全てを自分で組み立てる。そして、毎回予想の出来ない展開が待っている。
道行く人々に迷惑をかけ、助けられ、暖かい声援をいただき,
最後までやり切る達成感。
リヤカー旅は、今一番エシカルな旅のスタイルの一つだと思う。
(「エシカル」ってこう使うんだよね?)
まずは市電に乗ってリヤカー保管先の要法寺へ向かう。
ところが高知駅前をいくら探しても市電の駅が見つからない。約束の時間がどんどん近づいて来る。焦って駅の係員に市電の乗り場を尋ねる。
何のことはない。僕は、高知駅の裏口にいたのだ。道理で店が無いわけだ。
そうこれが予想の出来ない展開だ。?・?・?。
慌てて保管先に電話をし、少し遅れる旨を伝えた。
路面電車〈市電〉に乗り込み寺に向かう。
今の時間は、通勤時間だから電車の本数が多くてすぐに乗換えできます。と車掌さんが教えてくれる。街の中を一両編成の路面電車がちょろちょろ走り回っていて何ともかわいい。通勤時間だと言うのに電車は、空いていて席にも座れる。
大都会の通勤ラッシュとは雲泥の差だ。
(高知って、のんびり住むには良い街かもしれない。)
八時15分、要法寺に到着。
住職が暖かく迎えてくれた。「少し上がって行きなさい」とお茶とお菓子を頂いた。
金子さんが言っていたが、ここの住職は、とても理解があった。
このリヤカーの企画の本質的な所を理解して頂き、全面的に支持して下さるとのこと。今後、リヤカーの保管先で困ったら連絡を寄こしなさい。日蓮宗のネットワークを使って保管場所を探してくれるとのこと。と、誠に嬉しい申し入れをして下さった。
そう、このリヤカー企画のもっとも難しい事がこの保管場所探しだ。しかし、この保管場所探しリヤカー企画の中でかなり重要なところだ。見知らぬ土地で見ず知らずのお宅に飛び込みで無理なお願いをする。そして承諾頂く。世間様と真っ向から向かい合う時、断られ続ける事もある。しかし、保管先を見つけないと終われない。最終試練、僕らは、それをやり切ってきた。普通のサラリーマンのパパさんママさん、普通の女子大生もこの企画に参加してくれた。皆がその試練を乗り越えて来た。僕らは、社会の中で特別な人達ではない。だが僕ら皆、最終試練を乗り越えた紛れもないリヤカー野郎・リヤカー系女子なんだ。
ご住職のお申し出は、最後の切り札として大切にとっておこう。
そんな素敵な申し入れして下さるご住職とお会いになりたい方は、高知の要法寺さんに行くか「いのりんぴっくin中四国」に出掛けてみてください。
ご住職と
奥様もリヤカー系女子
九時、ご住職からボールペンとウェットティッシュの差し入れを頂きいよいよ出発!
今の所、空は薄曇りでリヤカー日和。少し蒸すが、太陽が出てないので助かる。
とりあえず西に向かって進む。歩道も整備されていて歩きやすい。気持ちよく歩を進める。1時間ほど歩いて見つけたスーパーでドリンク類と非常食用のパンを買い込む。山間部、食料の補給が出来ないところも出てきそうだが、これで何とかなるだろう。
再び歩き始めたところで、若い女性の方が「テレビで見た事あります!頑張ってください!」と水の差しいれを頂く。(まだテレビには出ていないんだけど)と思いながら、爽やかに「ありがとうございます。」と挨拶をして差し入れを頂いた。太陽が顔を出し始めたが、テンション上がった。よし頑張ろう。
ふと道路の青看板を見ると、土佐の文字。
???。
道を間違えている。
どうやら3キロほど手前の三叉路を右に行くべきだったようだ。ガソリンスタンドのオッチャンと工事工事現場の兄ちゃんにコース修正の道を教えてもらい朝倉駅へ向かう。途中、声援を頂いたが5キロほどロスをした。炎天下の5キロは、かなり落ち込む。コンビニに寄って地図(ツーリングマップル)をコピーした。今回は、時間的にタイト。携帯だけでは少し心許ない。真面目に地図を用意する事にした。
アナログだが、踏破するごとに一枚ずつコピーした地図を捨てて行くのは意外とモチベーションが上がった。
朝倉駅までもどり予定の道にもどった。
その後、いの町の職安のトイレを借りた。ありがとうございました。
道路にそって走る線路を、一両編成の電車がのんびり走り過ぎていく。のどかな時間が流れる。
交通量もあまり多くなく歩きやすい。
13時近くなり、道路わきの喫茶店で日替わり定食を頂く。5品以上入ったかなり充実の定食だった。しかも全て手作りだった。冷凍食品を使っていない。それで600円。超お値打ち超満足で喫茶店を後にした。やはり高知住みやすそうだ。物価も安くて気候も良い。また一つ素敵な町を見つけた。
太陽が容赦なく照りつける。体中が熱い!アイスキャンディーをかじろうとスーパーの駐車場にリヤカーを停める。そこで女性と男性から声を掛けられる。気持ち的には早く凉しい店内に入りたいところだが男性は、1キロほど手前でリヤカーを見掛け自転車で追いかけて来てくれたとのこと。それではあまり無下にする訳にもいかず、笑顔で企画の説明をした。温かい応援の言葉を頂いた。
スーパーの店内が天国に感じる。普段は、クーラーの効きすぎた所を通ると(アホじゃろう、こんなにクーラー効かせる必要ないだろう!)と思うが今日は、とにかくクーラーが有りがたかった。
スーパーを出て歩き始めると再び汗が噴き出す。やっと冷やした体がすぐに火照って来る。
その時、反対車線から作業服をきたオッチャンが、「お茶でも飲んでいきなさい。」と声を掛けてくれた。
大山自動車さんの皆さんに迎えて頂き、冷たいお茶と小夏、アイスキャンディーを頂く。香川で「小夏」を食べた事があったが白い薄皮が多く果肉が少なく酸っぱいイメージだった。しかし、食べ方違った。
なんと塩を付けて白い薄皮ごと食べるのだと教えて貰った。言われた通り、薄皮ごと口に入れた。塩の効果か薄皮に少しが甘味が有り酸味とのバランスが絶妙だ。美味い。暑さで疲れた体には絶品だ。
地元の逸品を見つけた感じで大満足!
大山自動車を後にして余韻が薄れる間もなく、「さんさん市」なる農産物のお店の女性に呼び止められスイカをご馳走になる。そこにいたお客さんや近所の方が次々に寄ってきて差し入れをリヤカーに放り込んでくれる。有難うございました。高知人、優しすぎる。
16時すぎ、日が傾いてきた。今日の目的地である小浜キャンプ場まではまだ10キロ以上ある。皆さんの応援でテンションも上がった。少し足が痛くなってきているが一気に目的地を目指す。
山間は、日が暮れるのが早い。コンビニで夕食を買い込みキャンプ場までの道と銭湯がないか情報収集する。すると地元の方が小浜キャンプ場より少し手前のコスモス宮の前公園の方が良いとのアドバイスを頂いた。予定変更、コスモス宮の前公園へ向かう。公園の入り口前のお宅の方からトマトときゅうりの差し入れを頂く。公園の中に入り、真っ暗な中、配達時間調整中で駐車していたトラックのお姉さんからたこ焼きの差し入れを頂く。今日は、最後の最後まで高知の皆様の優しさに甘えっぱなしの一日だった。
テントに潜りこむと同時に爆睡!
えっぱなしの一日だった。